こんにちは。高級モトクラブ、運営者の「A」です。
映画のワンシーンで見た荒野を駆け抜けるロングフォークのシルエットや、都会の夜に映えるコンパクトで攻撃的なスタイル。
ハーレーダビッドソンのチョッパーカスタムに憧れを抱くきっかけは人それぞれですが、その強烈な個性は一度見たら忘れられない魅力がありますよね。
しかし、いざ自分がオーナーになろうと考えると、数百万円単位の費用や維持の難しさ、そして日本の厳しい車検制度など、現実的な壁が立ちはだかるのも事実です。
ネットで検索しても専門用語ばかりで、結局何を選べばいいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、私自身が長年この世界に身を置いて見聞きしてきた経験をもとに、これからチョッパーライフをスタートさせたい方が後悔しないための基礎知識から、具体的な購入戦略までを徹底的に深掘りして解説していきます。
- チョッパースタイルの歴史的背景と具体的な種類の違い
- エンジンの種類やフレームごとの乗り味とメンテナンス性
- カスタム車両を購入する際の費用相場と維持費の現実
- 失敗しないための車両選びと信頼できるショップの見つけ方
ハーレーのチョッパーカスタムの基礎知識と種類
「チョッパー」という言葉はあまりにも有名ですが、その定義やスタイルは時代とともに細分化され、非常に奥深いカルチャーを形成しています。単に「改造車」と呼ぶにはあまりにも哲学的で、アートに近い側面も持っています。
まずは、自分が「カッコいい」と感じるスタイルが何なのか、そしてそれを実現するためにはどのようなベース車両やエンジンが必要なのか、その根幹となる知識をしっかりと固めていきましょう。
そもそもチョッパースタイルとは?

「チョッパー(Chopper)」という言葉の語源が、英語の「Chop(切り落とす)」にあることはご存じの方も多いかもしれません。しかし、これが単なる軽量化のための改造から、自己表現のための「不可逆的なフレーム加工」へと進化した歴史的背景を知ることで、そのスタイルの見え方は大きく変わります。
ボバーからチョッパーへの進化
歴史を紐解くと、1940年代、第二次世界大戦から帰還した米兵たちが、重装備の軍用ハーレーを速く走らせるためにフェンダーを短く切り落とした「ボバー(Bobber)」スタイルが起源とされています。そこから時代が進み、1960年代のカウンターカルチャー(対抗文化)の波に乗って生まれたのがチョッパーです。
彼らは速さよりも「既存の価値観への反抗」や「自由」を表現するために、フレームのネックを切断して角度を寝かせ(レイク角の変更)、フロントフォークを極端に長く延長しました。これは、当時のメーカーが作る「正しいバイク」へのアンチテーゼでもあったのです。
代表的なスタイルの分類
現代において「ハーレーのチョッパーカスタム」と一口に言っても、そのスタイルは多岐にわたります。自分の目指す方向性を定めるために、代表的なスタイルを整理しておきましょう。
| スタイル名 | 主な特徴 | 発祥・背景 |
|---|---|---|
| ロングフォーク | 長く寝かせたフォーク、 シーシーバー、リジッドフレーム。 | 映画『イージー・ライダー』に代表される王道スタイル。 直進安定性は高いが小回りは苦手。 |
| フリスコスタイル | ハイマウントタンク、 ナローなTバーハンドル、ミッドコン。 | サンフランシスコの急坂やすり抜け (レーンスプリッティング)に対応した実戦的カスタム。 |
| ディガースタイル | ロー&ロング、プリズムタンク、 低いハンドル、派手なペイント。 | ドラッグレース車両のスタイルを公道に持ち込んだもの。 70年代に流行。 |
| ボバー | 前後16インチタイヤ、低いハンドル、 純正フレームの面影を残す。 | 40〜50年代のレーサースタイル。 チョッパーの前身だが、現代では同列に語られることも多い。 |
特にフリスコスタイルなどは、ただ見た目がカッコいいからタンクを高くしているわけではありません。急な坂道でもキャブレターにガソリンが最後まで供給されるように計算された配置なのです。こうした「機能美」を知ると、カスタムへの愛着が一層深まりますよね。
フロントフォークを寝かせる(レイク角を増やす)と、見た目はワイルドになりますが、ハンドリングには「トレール量」という数値が大きく影響します。
計算なしにフォークだけ伸ばすと、ハンドルが切れ込む「フロップ現象」が起きたり、高速道路でハンドルが振れる危険な状態になったりします。プロのビルダーは、トリプルツリーの角度(レイクツリー)でこのトレール量を補正し、まともに走れるチョッパーを作っているのです。
カスタムに適したベース車の選び方

自分だけのチョッパーを作るための第一歩は、土台となる「ベース車」選びです。
ここで最も重要な選択肢となるのが、リアサスペンションを持たない「リジッドフレーム(ハードテール)」にするか、サスペンションを備えた「ソフテイルフレーム」や「ダイナフレーム」などの純正フレームにするか、という点です。
これは、見た目だけでなく、日本の法律(車検)との戦いでもあります。
究極の美学「リジッドフレーム」
リジッドフレームの最大の魅力は、リアアクスル(車軸)からネックまで一直線に伸びるフレームラインの美しさです。
サスペンションという機械的な構造物がないため、車体周りを極限までシンプルにできます。しかし、路面の凹凸はすべてタイヤの空気圧とシートのスプリング、そしてライダーの腰で吸収しなければなりません。
さらに注意が必要なのが、日本国内における車検の問題です。純正でサスペンションが付いている年式の車両を後からリジッドフレームに改造する場合、強度検討書の提出や緩衝装置の省略に関する厳しい審査をクリアし、「構造等変更検査(公認取得)」を行う必要があります。
これをクリアしていない車両は「不正改造車」となり、公道を走ることはできませんし、車検も通りません。
中古車市場で「リジッドフレーム」として売られている車両の中には、車検証の型式に「改」の文字が入っていない、いわゆる未公認車両が混ざっていることがあります。
こういった車両を購入してしまうと、次回の車検で数百万円規模の修正費用がかかるか、最悪の場合ナンバーを取得できないリスクがあります。必ず車検証の記載内容(特に「緩衝装置」の備考や型式)を確認しましょう。
現実的な解「サスペンション付きフレーム」
一方で、ソフテイルフレームやスポーツスターのフレームをベースにする場合は、車検のハードルが比較的低くなります(もちろん、寸法の変更などは構造変更が必要ですが)。
乗り心地も確保されており、ロングツーリングも快適です。最近では、サスペンションを残しつつリジッド風に見せる「ハードテールキット」なども販売されていますが、これらも溶接加工を伴う場合は構造変更が必要になるケースが大半です。
日本の法律では、車両の構造を大きく変更した場合、使用者の責任において登録内容の変更を申請することが義務付けられています。この点については、国土交通省のガイドラインにも明記されています。(出典:国土交通省『自動車検査・登録ガイド』)
人気の高いショベルエンジンの特徴

チョッパーの世界で「王様」のような存在感を放ち続けているのが、1966年から1984年にかけて製造されたショベルヘッドエンジンです。なぜ、生産終了から40年以上経った今でも、これほどまでに愛され、高値で取引されているのでしょうか。
アナログな鼓動感と「三拍子」
ショベルヘッドの魅力の筆頭は、そのフィーリングにあります。現代のハーレー(ツインカムやミルウォーキーエイト)は、排ガス規制や快適性のために非常にスムーズに回るエンジンになっていますが、ショベルは違います。
重たいフライホイールが回る「ドコ、ドコ、ドコ……」という不規則で力強いアイドリング、いわゆる「三拍子(ポテトサウンド)」は、点火時期やキャブレターの調整次第で奏でられる、この時代のエンジン特有の音楽です。走行中の振動も凄まじいですが、それが「鉄の馬に乗っている」という強烈な実感を与えてくれるのです。
前期(アーリー)と後期(コーン)の違い
ショベルヘッドには大きく分けて2つの世代があります。
- アーリーショベル(1966〜1969年):
腰下(クランクケース)は前の世代のパンヘッドと同じ「ジェネレーター(発電機)」仕様で、腰上(ヘッド)だけがショベルになったモデル。ビンテージ度が高く、非常に希少です。 - コーンショベル(1970〜1984年):
発電機がオルタネーターになり、カムカバーが円錐状(コーン)になったモデル。一般的に「ショベル」というとこちらを指すことが多いです。
付きまとうトラブルとメンテナンス
ただし、ショベルヘッドは「手のかかるエンジン」であることも事実です。シリンダーが鋳鉄製でヘッドがアルミ製であるため、熱膨張率の違いからガスケット抜けやオイル漏れが起きやすい構造です。また、当時の加工精度や材質の問題で、バルブガイドの摩耗なども早めに来ます。
「ショベルは壊れる」とよく言われますが、その多くは「適切な整備がされていない」か「日本特有の渋滞によるオーバーヒート」が原因です。
しっかりとした知識を持つ専門店でオーバーホールされたエンジンであれば、北海道一周ツーリングも問題なくこなせるポテンシャルを持っています。
定期的な増し締め、オイル交換(2,500kmごと推奨)、暖機の徹底など、ライダー自身がメカニックのような視点を持つ必要があります。それが「面倒」ではなく「愛おしい」と思えるなら、ショベルは最高の相棒になるでしょう。
エンジンの特徴だけでなく、具体的な相場感や維持費まで含めた『ヴィンテージハーレーの全体像』を掴みたい方は、ぜひこちらの記事もチェックしてみてください。
ソフテイルフレームでのカスタム

「リジッドフレームの見た目には憧れるけれど、長距離ツーリングでの疲労や、故障のリスクを少しでも減らしたい」という現実的な選択をするライダーにとって、ソフテイルフレームをベースにしたカスタムは最適解と言えます。
ソフテイルの構造的メリット
1984年に登場したソフテイルフレームは、一見するとリジッドフレームのような三角形のラインを持っていますが、実はトランスミッションの下部にサスペンション(ショックアブソーバー)が隠されています。
これにより、オールドスクールな外観を保ちつつ、路面の段差をしっかりと吸収してくれるのです。特に、リジッドマウント(エンジンをフレームに直付け)されたエボリューションエンジンのソフテイルは、エンジンの鼓動をダイレクトに感じられるため、現在でも非常に人気があります。
カスタムの方向性と広がり
ソフテイルベースのチョッパーは、以下のようなスタイルが作りやすい傾向にあります。
- ボバースタイル:
前後タイヤを太くし、フェンダーを短くカット。FL系のフロントフォークを生かした重厚なスタイル。 - チョロスタイル(チカーノ):
極端に長い左右出しのマフラー(フィッシュテール)や、高いエイプハンガーハンドル、煌びやかなメッキパーツで飾る西海岸スタイル。 - ニュースクールチョッパー:
ワイドタイヤキットを組み込み、リアタイヤを200mm〜250mm以上の極太サイズにする迫力あるスタイル。
ソフテイルはアフターパーツの数が圧倒的に多く、ボルトオン(加工なし)で取り付けられるパーツも豊富です。そのため、最初はライトなカスタムから始めて、徐々に自分好みに仕上げていくという楽しみ方ができるのも大きな魅力です。
新車からチョッパーを作る方法

「古いバイクは故障が怖い」「いつでもセル一発でエンジンをかけたい」という方は、あえて現行モデルや高年式の中古車(ミルウォーキーエイトやツインカム)をベースにチョッパーを作るという選択肢もあります。
現代技術で蘇るチョッパースタイル
最新のエンジン「ミルウォーキーエイト」は、4バルブ化され、一部水冷化されるなど、パフォーマンスは歴代最強です。
これをベースに、フレームのネック周りを加工してロングフォーク化したり、外装をワンオフで作ったりすることで、信頼性とスタイルを兼ね備えた「ハイテクチョッパー」が完成します。
特に、ブレイクアウト(Breakout)のような最初からチョッパーテイストを取り入れたモデルは、ハンドルやマフラーを変えるだけでも十分な迫力を出せます。
電子制御という新たな壁
ただし、高年式車でのチョッパー製作には、旧車にはない難しさがあります。それは「電子制御」と「法規制」です。
- CAN-BUSシステム:
最近のハーレーは、配線一本一本が信号線となっており、安易にウインカーやスイッチを交換したり、配線を切ったりするとエラーコードが出てエンジンがかからなくなることがあります。ハンドルのスイッチ周りをシンプルにする「スムージング」を行うには、高度な電装知識が必要です。 - ABSユニット:
ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)のユニットが邪魔をして、フレーム周りをスカスカに見せるようなカスタムが難しい場合があります。 - 排ガス・騒音規制:
年式が新しいほど規制が厳しく、マフラー交換やエアクリーナー交換を行うには、インジェクションチューニング(燃調)が必須となります。また、車検対応のマフラーでないと公道を走れないため、選択肢が限られます。
それでも、真夏の大渋滞でもオーバーヒートせず、冬でも一発始動し、高速道路を120km/h以上で巡航できる性能は、旧車にはない圧倒的なアドバンテージです。
「走る・曲がる・止まる」を犠牲にせず、雰囲気だけチョッパーを楽しみたいという層には、現代版チョッパーが賢い選択かもしれません。
ハーレーのチョッパーカスタムの購入ガイド
さて、ここからはより現実的で、かつ最も皆さんが頭を悩ませるであろう「お金」と「買い方」のお話です。
理想のスタイルが決まっても、予算が合わなければ絵に描いた餅ですし、安物買いの銭失いになってしまっては、せっかくのハーレーライフが台無しになってしまいます。
ハーレー、特にチョッパーは決して安い買い物ではありません。購入費用だけでなく、その後の維持管理費も含めたトータルコストを把握し、賢く立ち回ることが、長く楽しみ続けるための秘訣です。
ここでは、市場の相場観から、絶対に失敗しないための車両の見極め方まで、私の経験を交えて赤裸々にお話しします。
完成済みのカスタム中古車の相場

自分だけのフルオーダーメイドで一から製作するのも夢がありますが、製作期間が半年から1年、長ければ数年かかることもザラです。
「今すぐ乗りたい!」という方や、「できるだけ予算を抑えたい」という方にとって、すでにスタイルが出来上がっているカスタムの中古車を購入するのは、非常に賢い選択肢と言えます。
しかし、中古車市場の価格設定は非常に複雑です。単に「年式が新しいから高い」「古いから安い」という常識は通用しません。
ベース車両の希少性、カスタムの完成度、使用されているパーツの価値(当時物のヴィンテージパーツか、現代のリプロダクション品か)、そしてエンジンのコンディションによって、価格は青天井になります。
現在の日本国内における、主要なエンジンごとのカスタム済み車両の相場目安を整理してみました。
| エンジン/モデル | 相場目安(車両本体) | 市場の動向と特徴 |
|---|---|---|
| スポーツスター (エボリューション) | 150万〜250万円 | 最もタマ数が多く、チョッパー入門に最適。 近年価格が上昇傾向にありますが、まだ手の届く範囲。 軽量で扱いやすく、日本の道路事情にマッチしています。 |
| エボリューション (ビッグツイン) | 250万〜400万円 | 信頼性と鼓動感のバランスが良く、非常に人気があります。 特に公認リジッドフレームに載せ替えられた車両は高値で安定しており、 資産価値も落ちにくいのが特徴です。 |
| ショベルヘッド | 350万〜550万円以上 | 状態やスタイルにより価格差が激しいゾーンです。 300万円台の車両は、購入後にエンジンのオーバーホールが 必要になるケースが多いと覚悟しておいた方が良いでしょう。 |
| パンヘッド ナックルヘッド | 600万円〜1,200万円超 | もはやバイクというより「動く骨董品」あるいは「投機対象」です。 オリジナル度が高いほど高額になりますが、チョッパーの場合は 「当時のチョッパーカルチャーを反映した改造(サバイバー)」 にも高い価値が付きます。 |
「激安車両」の罠に注意
相場よりも明らかに安い(例:ショベルで200万円台前半など)車両には、必ず理由があります。
フレームが歪んでいる、エンジン内部が深刻なダメージを負っている、あるいは書類に不備があり車検が通らない「部品取り車」扱いである可能性が高いです。初心者が価格だけで飛びつくと、修理費で数百万円が飛んでいくことになります。
製作にかかるカスタム費用の総額

「気に入った中古車がないから、ノーマル車両を持ち込んで、あるいはショップにあるベース車から自分好みに作りたい」という場合、カスタム費用は一体いくらかかるのでしょうか。
これは「どこまでやるか」によって文字通り桁が変わってきますが、大まかな予算感を掴んでおくことは重要です。車両本体価格とは別に、カスタム作業だけで発生する費用の目安を見ていきましょう。
ライトカスタム:予算30万〜80万円
フレームやエンジンの主要部分には手を加えず、ボルトオン(無加工で取り付け可能)パーツを中心に交換するパターンです。
- ハンドル交換、ウインカー交換、シート交換
- ガソリンタンク交換(塗装済み社外品など)
- マフラー交換、エアクリーナー交換
- リアサスペンションのローダウン
これくらいであれば、部品代と工賃を含めても現実的な範囲で収まります。見た目の印象はガラリと変わりますが、チョッパー特有の「シルエットの根本的な変化」までは望めません。
フルカスタム:予算150万〜350万円以上
フレームの加工や、ワンオフ(一点モノ)パーツの製作を行い、世界に一台だけのチョッパーを作り上げるパターンです。
- フロントフォークの変更:
スプリンガーフォークやガーターフォークへの換装(パーツ代だけで30万〜60万円)。 - フレーム加工:
シートレール加工や、リジッドバーの溶接、ネックの角度変更など。これには高度な溶接技術と、その後の塗装(パウダーコート等)が必要です。 - ワンオフタンク・フェンダー製作:
鉄板から叩き出して作るタンクやフェンダー。板金職人の技術料がかかります。 - オールペン(全塗装):
車体全体の色替えや、フレイムス(火の玉)、キャンディーカラーなどの特殊塗装。凝れば凝るほど高額になります。 - オープンプライマリー化:
エンジンの動力を伝えるベルトを剥き出しにするカスタム。部品代と工賃で20万〜40万円。
見落としがちな「公認取得費用」
さらに忘れてはならないのが、これら大掛かりなカスタムを行った後に公道を合法的に走るための「構造変更検査(公認車検)」の費用です。強度検討書の作成や、陸運局への持ち込み検査代行費用として、通常の車検費用に加えて10万〜30万円ほどの手数料がかかるのが一般的です。
販売されている車両の選び方

いざショップや個人売買サイトで販売されている車両を見る際、舞い上がってしまって「カッコいい!」という感情だけでハンコを押してしまうのは非常に危険です。特に日本国内でチョッパーに乗る以上、「法適合性」と「機械的な健康状態」は、冷静な目でチェックしなければなりません。
1. 車検証と現車の整合性(最重要)
チョッパー選びで最もトラブルになりやすいのが、書類の問題です。現車確認の際は、必ず車検証を見せてもらい、以下の項目をチェックしてください。
- 車体の形状:
車検証に「側車付オートバイ」など不可解な記載がないか(サイドカー登録で無理やり車検を通しているケースがあります)。 - 型式:
型式の前後に「改」の文字があるか。フレームを切ったり伸ばしたりしているのに「改」が入っていない場合、未公認の不正改造車の可能性があります。 - 乗車定員:
シングルシート(一人乗り)になっているのに、車検証が「2人」のままだと、車検に通りません(構造変更が必要)。 - 備考欄:
「緩衝装置」に関する記載があるか確認します。リジッドフレームなのに備考欄に何も書かれていない場合、非常にグレー、あるいはクロに近い状態です。
もし書類の見方が分からない場合は、正直にショップのスタッフに「次の車検はこのまま通りますか?それとも構造変更が必要ですか?」と聞いてください。ここで言葉を濁すようなショップは避けた方が無難です。
2. エンジンと電装系のコンディション
「エンジンかかりますか?」と聞いて、かけてもらうだけでは不十分です。以下のポイントを五感を使って確認しましょう。
- 異音:
エンジンの回転に合わせて「カンカン」「カチカチ」という高く鋭い金属音がしていないか。タペット音やピストン回りの異常のサインです。 - 白煙・黒煙:
アクセルを煽った時にマフラーから白煙(オイル上がり/下がり)や黒煙(燃調が濃すぎる)が出ていないか。 - 配線の処理:
シート下やタンク下を覗き込んで、配線がぐちゃぐちゃになっていないか。「配線地獄」になっている車両は、振動で断線したりショートして火災になったりするリスクが高いです。丁寧に処理されている車両は、ビルダーの良心が宿っています。
憧れのハーレーが、納車直後にただの鉄屑になってしまったら…。そんな悪夢を見ないために、契約前に必ずチェックしてほしい『買ってはいけない特徴』をまとめました。ぜひ併せてご覧ください。
信頼できるカスタムショップ探し

チョッパーライフが天国になるか地獄になるか、その8割は購入する、あるいはお世話になるカスタムショップ選びで決まると言っても過言ではありません。
ハーレー、特にカスタム車は「買って終わり」ではなく「買ってからが始まり」です。定期的なメンテナンス、車検、突発的なトラブル対応など、ショップとは長い付き合いになります。
「相性」を見極めるための対話
技術力はもちろん大切ですが、それ以上に大切なのが「人間的な相性」と「価値観の共有」です。良いショップの特徴として、以下のような点が挙げられます。
- デメリットを隠さない:
「リジッドは腰に来ますよ」「この年式のこのパーツは壊れやすいですよ」と、ネガティブな情報も正直に教えてくれる。 - NOと言ってくれる:
素人の無茶な注文(例:走行性能を無視した危険なジオメトリーなど)に対して、「それは危ないからやめた方がいい」とプロの視点で止めてくれる。 - 見積もりが明朗:
カスタムや修理にかかる費用の概算と、工賃の内訳をしっかりと説明してくれる。
逆に、「何でも安くやりますよ」「車検なんてどうにでもなりますよ」といった調子の良いことばかり言うショップは、後々トラブルに発展するケースが多いので注意が必要です。
実際に店舗に足を運び、作業場の整理整頓具合や、スタッフの対応を見て、直感的に「ここに任せたい」と思えるかどうかが重要です。
旧車が得意な専門店の見分け方

もしあなたが、ナックルヘッド、パンヘッド、ショベルヘッドといった、いわゆる「旧車(ヴィンテージハーレー)」をベースにしたチョッパーに乗りたいのであれば、現行モデルを中心に扱う正規ディーラーや一般的なバイク用品店では対応できません。
必ず、旧車の整備実績が豊富な専門店を選ぶ必要があります。
専門店ならではの「設備」と「在庫」
旧車専門店を見分けるための具体的なチェックポイントは以下の通りです。
本物の専門店を見抜く3つの視点
- 工作機械の有無:
工場内に「旋盤(せんばん)」や「フライス盤」といった工作機械があるか。
旧車は部品が廃盤になっていることも多く、修理には部品を「交換」するのではなく「加工・製作」する技術が求められます。これらの機械が稼働しているショップは、高い技術力を持っている証拠です。 - ストックパーツの山:
工場の隅に、一見ガラクタに見えるような古い部品が山積みになっているか。
これらは修理に使われる貴重なドナーパーツです。整理整頓は大切ですが、あまりにも綺麗すぎて部品在庫がない店は、旧車対応力が低い可能性があります。 - 常に整備待ちの車両がある:
腕の良いショップには、常に全国から修理待ちの車両が集まります。「すぐに入庫できますよ」という店より、「半年待ちです」と言われる店の方が、皮肉にも信頼できる場合が多いのがこの業界の常識です。
ハーレーチョッパーカスタムの総括
ここまで、ハーレーのチョッパーカスタムの世界について、スタイルの歴史から具体的な費用、法規制、そしてショップ選びに至るまで、長文にお付き合いいただきありがとうございました。
チョッパーに乗るということは、単に便利な移動手段を手に入れることではありません。
夏はエンジンの熱に焼かれ、冬は寒風に晒され、振動で手足が痺れ、時には予期せぬトラブルで道端に立ち尽くすこともあるでしょう。利便性や快適性だけを考えれば、現代の国産バイクや車の方が遥かに優れています。
しかし、自分の感性に従って選び抜いたパーツで組み上げられた、世界に一台だけの鉄の塊に跨り、エンジンの鼓動と一体になって地平線を目指す瞬間の高揚感は、他の何物にも代えがたいものです。
それは、効率化が進む現代社会において、人間が本来持っている「野性」や「自由」を取り戻すための儀式のようなものかもしれません。
この記事が、あなたがこれから踏み出すチョッパーライフの第一歩を支える地図となり、最高の一台と巡り会うための助けになれば、これ以上の喜びはありません。どうか安全に、そして最高にクールなバイクライフを楽しんでください。
※記事内の費用相場や法規制に関する情報は、執筆時点(2025年12月)での一般的な目安です。法改正や市場変動により状況が変わる可能性がありますので、正確な情報は各カスタムショップや国土交通省の公式サイト等をご確認いただき、最終的な判断は専門家にご相談ください。

