こんにちは。高級モトクラブ、運営者の「A」です。
愛車のハーレーでツーリングを楽しんでいる最中、ふとメーターパネルに目を落とすと、見慣れないオレンジ色のエンジンマークが点灯している…そんな経験はありませんか?
心臓がキュッと締め付けられるような不安に襲われますよね。
「もしかしてエンジンが壊れた?」「このまま走って帰れるの?」「修理代はいくらかかるんだろう…」と、悪い想像ばかりが頭をよぎってしまうものです。
特にハーレーダビッドソンのような輸入車の場合、国産車と違って情報が少なかったり、検索しても英語の専門的なマニュアルばかりが出てきたりして、解決の糸口が見つかりにくいことが多々あります。
「ハーレーのエラーコード一覧」と検索しても、ただコードが羅列されているだけで、「結局、私のバイクはどうすれば直るの?」という具体的な対処法まで書かれているサイトは意外と少ないのが現状です。
でも、安心してください。メーターの警告灯やエラーコードは、愛車からの「ここが少し調子悪いよ」というSOSのメッセージです。
これらを正しく読み解くことができれば、重大なトラブルを未然に防ぐことができますし、実は単なるセンサーの汚れやバッテリーの電圧不足といった、自分で対処できる軽微なトラブルであることも非常に多いのです。
この記事では、ハーレー初心者の方でも自分で愛車の診断ができるように、メーターの操作方法からエラーコードの意味、そして具体的なトラブルシューティングの手順までを、私の経験を交えて徹底的に解説します。
ディーラーに電話するその前に、まずはこの記事を読みながら、愛車の健康診断を一緒にやってみましょう。
- メーターの各種警告灯が点灯・点滅するメカニズムと緊急性の見極め方
- モデル年式ごとに異なる「診断モード」の正確な起動手順とリセット方法
- 「P0505」や「P1511」など、頻発するエラーコードの具体的な原因と対策
- ショップに修理を依頼する前にオーナー自身が確認すべきチェックポイント
ハーレーのエラーコード一覧とP0505の基礎
ハーレーダビッドソンは、鉄の塊のようなアナログな見た目をしていますが、近年のモデル(特に2007年のインジェクション化以降)は、非常に高度な電子制御システムによって管理されています。
エラーコードを理解するためには、まずメーターパネルにある警告灯がどのような役割を持っているのか、そしてどのようにして車両の脳みそであるコンピューター(ECM)にアクセスするのかを知る必要があります。
ここでは、トラブルシューティングの第一歩となる基礎知識を深掘りしていきます。
メーターの警告灯一覧と点灯の意味

ハーレーのスピードメーターには、ライダーに車両の状態を伝えるための様々なインジケーター(警告灯)が埋め込まれています。
普段は気にも留めない小さなランプですが、いざ点灯すると非常に重要な意味を持ちます。それぞれのランプが何を示しているのか、詳しく見ていきましょう。
| アイコン/名称 | 通常時の動作 | 異常時の動作 | 意味と緊急性 |
|---|---|---|---|
| エンジンチェックランプ (エンジンのマーク) | キーONで約4秒点灯し消灯。 始動後は消灯。 | 走行中に点灯し続ける。 または点滅する。 | 【重要】エンジン制御系(センサー、点火、燃料)の異常。 点灯なら走行可能な場合が多いが、 点滅は重篤なトラブルの可能性あり。早急に停車。 |
| バッテリー警告灯 (バッテリーのマーク) | キーONで点灯。 始動後は消灯。 | 走行中に点灯。 アイドリングで点灯。 | 【要点検】充電電圧の異常。 レギュレーターやジェネレーターの故障、バッテリー寿命。 放置すると走行不能になる可能性大。 |
| セキュリティランプ (赤い鍵のマーク) | キーOFF後の点滅(警戒中)。 | 走行中に点灯。 不規則に点滅。 | 【注意】過去のエラー履歴が残っているか、ウインカー等の 電装系トラブル(球切れなど)を検知しているサイン。 |
| ABSランプ (ABSの文字) | キーONで点滅。 時速5km以上で消灯。 | 走行中も点灯 または点滅し続ける。 | 【注意】ABS機能の停止。通常のブレーキとしては機能するが、 急ブレーキ時のロック防止機能は作動しない。 |
特に注意が必要なのは、やはり「エンジンチェックランプ」です。このランプが点灯するということは、ECM(エンジンコントロールモジュール)が各センサーからの信号を受け取る中で、「あらかじめ設定された正常値の範囲を超えている」と判断したことを意味します。
例えば、マフラーを交換して抜けが良くなりすぎたために酸素濃度が変わったり、寒い日にバッテリー電圧が下がったりしただけでも点灯することがあります。つまり、「警告灯点灯 = エンジンが壊れた」とは限らないのです。
焦ってレッカーを呼ぶ前に、まずは落ち着いて安全な場所に停車し、エンジンの異音や異臭がないか、アクセルの反応に違和感がないかを確認してください。明らかに調子が悪い場合を除き、多くの場合は自走して帰宅することが可能です。
また、意外と見落としがちなのが「セキュリティランプ(赤い鍵マーク)」です。
これが走行中も点きっぱなしになる場合、セキュリティシステムの故障だと思われがちですが、実は「ウインカーの球切れ」や「ブレーキランプのスイッチ不良」など、ボディ周りの電装系トラブルを知らせているケースが非常に多いです。
ハーレーのシステムでは、BCM(ボディコントロールモジュール)が検知したエラーを、この鍵マークで統合して表示することがあるためです。
「このランプの色は危険?それとも大丈夫?」と迷ったら、警告灯の種類と緊急度を完全網羅したこちらの解説記事が役立ちます。
診断モード起動とリセット方法の手順

ディーラーのメカニックが持っている数百万円もする専用診断機(デジタルテクニシャン)がなくても、ハーレーには「オンボードダイアグノシス」という自己診断機能が標準で備わっています。
これを使えば、メーターの液晶画面にエラーコードを表示させることができます。この操作方法は、年式やモデルによって大きく2つのパターンに分かれます。
パターンA:2014年以降のツーリング、ソフテイル、ダイナ(CAN BUS搭載車)
この世代の車両は、ハンドル左側のスイッチボックスにある「トリガースイッチ(オドメーターの表示を切り替えるボタン)」を使用します。
- イグニッションスイッチは「OFF」の状態にします。
- ハンドル右側のRun/Stopスイッチは「Run(運転)」側に倒しておきます。(これ重要です!Stopだと診断できません)
- 左手の親指でトリガースイッチを押し込んだまま保持します。
- スイッチを押したまま、メインのイグニッションスイッチを「ON」にします。
- メーターの針が一度振り切れて戻ってくるまで、トリガースイッチは押し続けてください。
- メーターの液晶画面(オドメーター部分)に「diag」という文字が表示されたら、診断モード起動成功です。スイッチを離してください。
パターンB:2013年以前のモデル、および全スポーツスター
この世代は、スピードメーター本体の側面や背面についている「オドメーターリセットボタン(黒いゴムのボタン)」を使用します。
- イグニッションキーは「OFF」、Run/Stopスイッチは「Run」にします。
- メーターのリセットボタンを深く押し込んだまま保持します。
- ボタンを押したまま、イグニッションキーを「ON」に回します。
- メーターの針が動き出し、液晶に「diag」が表示されるまでボタンを離さないでください。
無事に診断モードに入ると、画面には「PSSPt」や「P S SP t b」といったアルファベットの列が表示されます。これらは診断対象のモジュールを表しており、現在点滅している文字が選択中のモジュールです。
- P = ECM / ICM(エンジン・点火系)
- S = TSM / TSSM(ウインカー・セキュリティ系)
- SP = Speedometer(スピードメーター)
- t = Tachometer(タコメーター)
- b = BCM / ABS(ボディ制御・ABS系 ※CAN BUS車のみ)
操作方法はシンプルです。ボタンを「短く押す(1秒未満)」と、点滅する文字(モジュール)が移動します。
調べたいモジュール(例えばエンジンのP)が点滅している状態で、ボタンを「長く押す(5秒以上)」と、その中身(詳細コード)が表示されます。
もし異常がなければ「none」と表示されます。異常がある場合は、「P0131」のような英数字のコードが表示されます。
複数のエラーがある場合は、さらに短く押すことで次々とコードが表示されます。リストの最後まで行くと「end」と表示されます。
そして、最も重要なのが「エラーコードのリセット(消去)」です。修理が終わった後や、一時的なエラーかどうかを確認したい場合は、コードが表示されている画面で、ボタンを再度5秒以上長押ししてください。
画面に「Clear」と表示されれば、そのモジュールの記憶は消去されます。これで一度エンジンを掛けて走り、再び同じコードが出なければ、それは「過去の一時的なエラー」だったと判断できます。逆にすぐ再点灯するなら、それは「現在進行形の故障」であり、修理が必要です。
アイドリングの不調とP0505の原因

信号待ちで止まろうとするとエンジンがストール(エンスト)しそうになる、あるいは逆にアイドリングの回転数が異常に高くなって下がらない…。
そんな症状と共にチェックランプが点灯した場合、最も疑わしいのがエラーコードP0505です。
P0505の定義は「Loss of Idle Speed Control(アイドルスピード制御の喪失)」です。これは、ECMが目標とするアイドリング回転数(例えば1000rpm)に対し、実際の回転数が大きくズレており、制御不能になっている状態を示しています。
ハーレーのインジェクション車(電子スロットル車を除く)には、スロットルボディの横に「IAC(Idle Air Control)バルブ」という小さな部品が付いています。
スロットルが全閉の状態でもエンジンが止まらないのは、このIACバルブが微調整を行い、針の穴のようなバイパス通路から必要な空気だけをエンジンに送っているからです。
では、なぜP0505が出るのでしょうか?最大の原因は「カーボンの堆積によるIACバルブの固着」です。
ハーレーのエンジン構造上、エアクリーナー側にはブローバイガス(未燃焼ガスを含んだオイルミスト)が戻ってきます。これが長年の走行でIACバルブの先端や通路に蓄積し、冷えて固まることで、バルブの動きを妨げてしまうのです。
その結果、空気が足りずにエンストしたり、逆にバルブが開いたまま固着して回転が下がらなくなったりします。
多くの場合は、清掃だけで劇的に改善します。
- エアクリーナーを取り外します。
- スロットルボディの上部にある小さな穴(IACポート)を探します。
- イグニッションをON/OFFして、「キュッ、キュッ」とバルブが動く音を確認します。
- インジェクション対応のキャブレタークリーナー等を染み込ませた綿棒で、ポート内部の汚れを優しく拭き取ります。
(※センサーに直接大量のクリーナーを噴射すると故障の原因になるので注意してください) - 清掃後、P0505エラーをリセットし、アイドリングが安定するか確認します。
もし清掃しても改善しない、あるいは頻繁に再発する場合は、IACバルブ自体のステップモーターが寿命を迎えているか、配線の断線(特にコネクター根元の被覆剥け)が考えられます。
その場合は部品交換が必要です。非常にポピュラーなトラブルですので、定期的なエアクリーナー清掃のついでに、IACポートも掃除する癖をつけておくと良いでしょう。
スロットル制御P1511の対処法

ツーリング先などで絶対に遭遇したくないトラブルの一つが、このP1511です。
これは2008年以降の電子スロットル(フライ・バイ・ワイヤ)搭載車特有のエラーで、正式名称は「EFI Power Management Mode(出力制限モード)」といいます。
このコードが出ると、バイクは明らかに異常な挙動を示します。アクセルを捻ってもエンジンの回転が鈍く、最高速度が極端に制限されたり(例えば40km/hくらいしか出ない)、最悪の場合はアイドリングのみで走行不能になったりします。
これを一般的に「リンプモード(Limp Mode:足を引きずって歩く状態)」と呼びます。
電子スロットルは、従来のワイヤー引きとは異なり、ライダーのアクセル操作を電気信号に変えてECMに送り、ECMがモーターを動かしてスロットルを開閉します。
もしこの信号に矛盾(例:アクセルは開けているのに、スロットルが開いていない等のデータ不整合)が生じると、暴走事故を防ぐためにECMは強制的にスロットルを閉じ気味にし、安全を確保しようとします。その結果がP1511です。
多くの場合、P1511は単独では発生せず、P2135(スロットルポジションセンサー相関エラー)などの他のコードと併発します。原因の9割は以下に集約されます。
- TCAコネクターの接触不良:
エアクリーナーの裏にあるスロットルボディのコネクター(Molex製)の端子が、走行振動で摩耗(フレッチング腐食)し、一瞬通信が途切れることによるもの。 - ハンドル交換時の配線ミス:
ハンドルスイッチから伸びる配線を延長したり中通ししたりした際、TGS(ツイストグリップセンサー)の配線に負荷がかかり、断線しかかっているケース。
出先でこの状態になった場合の緊急対処法としては、一度安全な場所に停車し、イグニッションをOFFにして数分間(メインリレーが落ちるまで)待ちます。
その後、再始動すると一時的にエラーが消えて普通に走れるようになることがよくあります。しかし、これはあくまで「システムの再起動」で誤魔化しているだけです。
根本的な解決には、エアクリーナー裏のコネクターを抜き差しして接点復活剤を塗布するか、対策品(金メッキ端子)への交換が必要です。
特に「段差を乗り越えた瞬間にチェックランプが点いた」といった場合は、ほぼ間違いなく配線の接触不良ですので、コネクター周りを重点的に点検してください。
コードp55や不明な表示の対処法

診断モードを使っていると、ネット上のエラーコード一覧には載っていない不思議なコードに遭遇することがあります。その代表格が「p55」や「Pn…」で始まる表示です。
「p55なんてコードどこにも載ってない!未知の故障か?」と慌ててしまいがちですが、これには明確な理由があります。
結論から言うと、これらはエラーコードではありません。
ハーレーの診断モードは、エラーコードを表示し終えると(またはエラーがない場合)、最後にそのモジュールの「部品番号(Part Number)」を表示する仕様になっています。
液晶ディスプレイの表示形式の制約で、「Part Number」の略である「Pn」という文字が、小文字の「p」と数字の「n(または5に見える)」のように表示されてしまうことがあるのです。
例えば、「Pn 32933-11」といった表示が出た場合、それは「ECMの部品番号は32933-11です」と自己紹介しているに過ぎません。これをエラーコード「P3293」や「p55」と見間違えてしまうケースが後を絶ちません。
- エラーコードは基本的に「アルファベット1文字 + 数字4桁」です。(例:P0131, B1121, U0100)
- 数字が5桁以上並んでいる、あるいはハイフン(-)が含まれている場合は、ほぼ間違いなく部品番号です。
- 「no rsp」と表示される場合は、「No Response(応答なし)」を意味し、そのモジュールが装備されていないか、電源が入っていないことを示します。(例:タコメーターがないモデルで”t”を選択した時など)
また、社外のフルコン(ThunderMaxやDynojet PowerVisionなど)を入れてチューニングしている場合、診断モードで表示される部品番号が書き換わっていたり、通常とは異なる特殊なコードが表示されたりすることがあります。
これらはチューニングデバイス特有の仕様である場合が多いので、デバイスのマニュアルも併せて確認することをお勧めします。「none」と出れば健康そのものですので、表示された謎の数字に神経質になりすぎないようにしましょう。
ハーレーのエラーコード一覧と主要トラブル
基礎知識が身についたところで、ここからはさらに踏み込んで、実際の整備現場で頻繁に遭遇する具体的なトラブル事例とエラーコードの関連性を解説していきます。
アルファベット(P, B, C, U)ごとの傾向を知ることで、トラブルの原因が「機械的な故障」なのか、「電気的な接触不良」なのか、あるいは「カスタムの影響」なのかを切り分ける判断材料になります。
電子スロットルp2100回路の修理

先ほど解説したP1511(出力制限モード)の原因として、非常に高い確率で同時に記録されるのがP2100というコードです。定義は「ETC Motor Circuit Open(電子スロットル制御モーター回路の開放)」となります。
簡単に言えば、ECMが「スロットルバルブを動かすためのモーターに電気を流そうとしたけど、回路が繋がっていない(断線している)よ!」と訴えている状態です。
スロットルボディ内部には強力なモーターとギアが内蔵されており、ECMからの指令でバタフライバルブを開閉していますが、この回路が遮断されれば当然スロットルは動きません。
「回路オープン」と聞くと、モーターのコイルが焼き切れたような重故障をイメージするかもしれませんが、ハーレーの場合、モーター本体が壊れることは稀です。では何が起きているのか?
犯人のほとんどは、やはり「コネクターのカプラー抜け」または「ピンの接触不良」です。
スロットルボディの左側面には、モーター制御用の配線カプラーが刺さっています。社外の大型エアクリーナーに交換している車両などでは、走行中の激しい振動でエアクリーナー自体が揺れ、その裏にある配線を引っ張ったり、カプラーを揺さぶったりすることがあります。
その結果、カプラーのロックが甘くなって半抜け状態になったり、内部の端子(ピン)に微細な摩耗が生じて導通不良を起こすのです。
まずはスロットルボディ側のカプラーを一度引き抜き、端子の状態を目視確認してください。端子が奥に引っ込んでいたり、緑青(サビ)が出ていたりしませんか?
問題がなければ、接点復活剤を塗布して、カプラーを「カチッ」と音がするまで確実に奥まで差し込み直します。さらに、配線が無理に引っ張られないよう、結束バンド(タイラップ)等で配線の取り回しを工夫して固定することで、再発を防ぐことができます。
電源トラブルP1608の正体とは

走行中に一瞬だけ「ガクッ」とエンジンが息継ぎをしたり、メーターの照明が一瞬消えてまた点いたりするような怪奇現象。その後に診断モードを見ると、P1608が記録されていることがあります。
モデルによっては定義が異なることもありますが、一般的には「EFI System Power Circuit Low」や「Loss of Continuous Battery」といった意味を持ちます。
これはECMに対して、「常時電源(バックアップ電源)」または「イグニッション電源」が正しく供給されなかったことを示しています。
ECMはエンジンを切っている間も、学習データやエラー履歴を保持するために、バッテリーから直接微弱な電気をもらい続けています。P1608が出るということは、この命綱である電源供給が、走行中の振動などで一瞬遮断されたことを意味します。
このエラーが出た時に、高価なECM本体を疑うのは早計です。原因の99%は、もっと原始的な場所にあります。
- バッテリーターミナルのボルト:
一番多い原因です。ハーレーの振動でボルトが緩み、接触不良を起こしているケース。ドライバーではなく、必ずスパナやソケットレンチで増し締めしてください。 - システムリレーの腐食:
ヒューズボックス内にある黒い四角いリレーの足が、湿気で錆びて接触不良を起こしていることがあります。 - アースケーブルの緩み:
エンジンやフレームに接続されているマイナスアース線のボルトが緩んでいないか確認しましょう。
「たかがネジの緩み」と侮るなかれ。電子制御のハーレーにとって、安定した電源供給は血液循環と同じです。P1608は「このままだといきなりエンジン止まるよ」という、車両からの最後の警告だと思って対処してください。
メーター学習値p1632の不具合

メーター交換を行った際や、オークションで中古のスピードメーターを入手して取り付けた際に、P1632やそれに類するコード(B2272等、年式による)が出ることがあります。
これは「Odometer Learned Up」や「Mileage Mismatch」といった意味合いで、メーターとECMのペアリングに関するコードです。
最近のハーレーは、走行距離の改ざんを防ぐため、ECM(エンジンコンピューター)とスピードメーターが相互に通信を行い、車台番号(VIN)と走行距離データを照合・ロックする仕組みになっています。
新品のメーターを取り付けて約50kmほど走行すると、メーターはECMの情報を読み込んで「自身のパートナー」としてロック(固定)します。
P1632は、この学習プロセスが完了したことを知らせるステータスコードであったり、あるいは「ECMの記録とメーターの記録が一致しないよ」という警告であったりします。
また、ThunderMaxなどのフルコンを導入した場合、純正ECMとは通信プロトコルが微妙に異なるため、メーター側が「正しい相手が見つからない」としてこのコードを吐くこともあります。
基本的に、メーターが正常に動作しており、オドメーターも表示されているのであれば、このコードが表示されていても走行性能には全く影響しません。リセットして消えれば問題なし、消してもすぐ出る場合は「仕様」と割り切っても良いケースが多いです。
ただし、中古メーターをポン付けして「VIN ERROR」などが表示され、オドメーターが表示されない場合は、ディーラー等の専用機器でのリセットや書き換え(場合によっては不可)が必要になります。
ブレーキランプb2161異常の対策

ここからは「Bコード(ボディ電装系)」の話です。カスタム好きのハーレー乗りが最もよく遭遇するのが、B2161(Brake Lamp Output Open)です。
意味は直訳すると「ブレーキランプ出力開放」、つまり「ブレーキランプの球切れ」です。
「球切れなら交換すればいいだけじゃん」と思いますよね?しかし厄介なのは、「ブレーキランプはちゃんと点灯しているのに、エラーコードが出て警告灯が消えない」というパターンです。
これは、純正のハロゲン電球から、省電力なLEDバルブに交換した際によく起こります。
CAN BUSシステムを搭載したハーレー(2011年以降のソフテイル等)のBCMは、回路に流れる電流値を常に監視しています。「ブレーキONなら、これくらいの電流が流れるはずだ」という基準値を持っているのです。
ところが、LEDは消費電力が非常に少ないため、ハロゲン球に比べて微弱な電流しか流れません。するとBCMは、「電流が少なすぎる!これは球切れに違いない!」と勘違いして、エラーコードを出力してしまうのです。
- CAN BUS対応LEDを使う:
抵抗が内蔵されており、エラーが出ないように設計された製品を選びましょう。 - ロードイコライザーの追加:
配線の途中に抵抗器(イコライザー)を噛ませて、消費電力を擬似的に増やします。 - BCMの学習機能(シンクロ):
一部のモデルでは、ハザードランプを数分間点滅させることで、BCMに現在の抵抗値を「正常」として再学習させる裏技が使える場合があります。
イグニッションON(エンジンはかけない)でハザードを点け、5分〜10分放置してみてください。これで警告灯が消えることがあります。
通信喪失エラーu0100の診断

最後に解説するのは、ネットワークトラブルを示す「Uコード」です。その中でも王様と言えるのがU0100、「Lost Comm w/ ECM(ECMとの通信喪失)」です。
スピードメーターやABSユニット、BCMなどが、「ECMからの返事がない!連絡が取れない!」とパニックになっている状態です。
文字通りに受け取ると「ECMが壊れたのか?」「配線が断線したのか?」と青ざめてしまいますが、実際の現場では、Uコード単体が出ることは稀で、他のPコードやBコードと一緒に記録されることが多いです。そして、その真犯人の多くは、またしても「バッテリー」です。
整備の世界ではこれを「ゴーストコード(Ghost Code)」と呼ぶことがあります。例えば、冬場の朝一番など、バッテリーが弱っている状態でセルモーターを回そうとすると、「キュル…キュ…」と回った瞬間に、車両全体の電圧がガクンと低下します(9V以下など)。
コンピューターなどの電子機器は、電圧が一定以下になると正常に起動できません。セルを回したその一瞬、ECMの電源が落ちたり、通信機能が停止したりします。
すると、他のモジュールたちは「あれ?ECMがいなくなったぞ?」と判断し、エラーログに「U0100」を記録するのです。その後、エンジンがかかって発電が始まれば通信は復旧しますが、エラー履歴だけが残ります。
もし診断モードで、U0100をはじめとするUコードが大量に記録されていたら、まずはバッテリーをフル充電するか、CCA(コールドクランキングアンペア)値を計測して、劣化していれば交換してください。それだけで、恐ろしい通信エラーが嘘のように消えることが多々あります。
ハーレーのエラーコード一覧で完治へ
ここまで、ハーレーの主要なエラーコード一覧とその対処法について、かなり詳しく解説してきました。
メーターに表示される無機質な英数字も、その意味を知れば、愛車がどこを痛がっているのかを教えてくれる言葉のように思えてきませんか?
エラーコードの診断は、修理の「終わり」ではなく「始まり」です。コードが出たからといって、すぐにその部品を交換するのではなく、「なぜそのコードが出たのか?」という背景を推測することが大切です。
P0505なら汚れかもしれない、P1511なら配線の接触不良かもしれない、Uコードならバッテリーかもしれない…。そうやって一つひとつ可能性を潰していく過程こそが、トラブルシューティングの醍醐味であり、愛車への理解を深める一番の近道です。
とはいえ、近年のハーレーは走るコンピューターです。内部基盤のショートや、ABSモジュールの複雑な油圧制御トラブルなど、私たちユーザーレベルでは手出しできない領域も確かに存在します。
この記事で紹介した初期診断や簡単な点検を行っても症状が改善しない場合、あるいは「やっぱり自分では不安だ」と感じた場合は、無理をせずプロのメカニックに相談してください。
あなたが診断モードで確認したエラーコードの情報は、プロに依頼する際にも、「どのような状況で何が起きたか」を伝えるための非常に有力な手掛かりになります。正しい知識を持って愛車と向き合い、一日も早く不安のない快適なハーレーライフを取り戻してくださいね。
本記事の情報は、一般的なハーレーダビッドソンのシステムに基づいた解説です。車両の年式、モデル、仕向け地(日本仕様・北米仕様等)によって、コードの定義や対処法が異なる場合があります。
作業を行う際は必ずご自身の車両に適合したサービスマニュアルを参照し、最終的な判断は専門知識を持つディーラーやショップにご相談ください。

