こんにちは。高級モトクラブ、運営者の「A」です。
ハーレーダビッドソンの最新世代エンジンであるハーレーミルウォーキーについて、その評判や性能が気になって検索された方も多いのではないでしょうか。
2017年の登場以来、劇的な進化を遂げたこのエンジンは、従来のハーレーファンの間でも「故障は少ないのか」や「鼓動感はどうなのか」といった話題で持ちきりです。
特に中古市場での購入を検討している方にとっては、エンジンの信頼性やミルウォーキーエイトならではのトラブルシューティングに関する情報は、購入前に必ず押さえておきたいポイントですよね。
また、ツーリングモデルとソフテイルでの乗り味の違いや、メンテナンスにかかる維持費についても不安があるかもしれません。
この記事では、私が実際に感じた魅力や注意点、そして長く付き合っていくためのコツを余すことなくお伝えします。
- ミルウォーキーエイトエンジンの構造的特徴と進化のポイント
- 中古車を選ぶ際に絶対に確認すべき年式とトラブル対策
- 排気量の違いによる走行性能と乗り味のキャラクター
- 三拍子やカスタムで自分だけの一台に仕上げる方法
ハーレーのミルウォーキーエンジンの特徴
ハーレーダビッドソンというブランドにおいて、エンジンは単なる動力源ではありません。それは、私たちがオートバイに求める「魂」そのものです。2017年に登場したミルウォーキーエイトは、これまでの歴史の中で最も大きな飛躍を遂げたエンジンと言っても過言ではないでしょう。
まずは、この新しい心臓部が一体どのようなコンセプトで作られ、私たちが愛するハーレーダビッドソンの走りをどう変えたのか、その核心に迫っていきましょう。
ミルウォーキーとはどんなエンジンか

「ミルウォーキーエイト(Milwaukee-Eight)」という名前、とても響きが良いですよね。このエンジンは2016年8月に発表され、2017年モデルから搭載が開始された、ハーレーダビッドソン史上9代目となるビッグツインエンジンです。
1936年のナックルヘッドから始まり、パンヘッド、ショベルヘッド、エボリューション、そしてツインカムへと続いてきた「空冷Vツイン」の系譜。ハーレーは常に、伝統的な鼓動感と、時代が求める性能の狭間で揺れ動いてきました。
しかし、このミルウォーキーエイトに関しては、これまでの「懐古主義的な進化」とは一線を画す、明確な「現代的なパフォーマンスへの回答」という色が非常に濃いと感じます。
ビッグツインエンジンの系譜
ハーレーの歴史はエンジンの歴史でもあります。ミルウォーキーエイトは、以下の名機たちの正統なる後継者です。
- ナックルヘッド(1936-1947)
- パンヘッド(1948-1965)
- ショベルヘッド(1966-1984)
- エボリューション(1984-1999)
- ツインカム(1999-2016)
- ミルウォーキーエイト(2017-現在)
開発の背景には、世界中のライダーからの切実なフィードバックがありました。「もっと追い越し加速が欲しい」「夏場の渋滞で股下が熱すぎるのは勘弁してくれ」「高速巡航をもっと快適にしたい」。
これらは、「プロジェクト・ラッシュモア」などを通じて集められた、現代のライダーの生の声です。
これまでのツインカムエンジンも独特の味わいがあり素晴らしかったですが、排気量アップに伴う発熱量の増大や、世界的に厳格化する環境規制(ユーロ4、ユーロ5)に対応するには、既存の設計の改良だけでは限界が来ていました。
そこでハーレーのエンジニアたちは、過去の遺産にしがみつくのではなく、設計を白紙に戻して根本から見直す決断をしたのです。
| 比較項目 | 前世代(Twin Cam)の課題 | Milwaukee-Eightの解決策 |
|---|---|---|
| 熱対策 | 渋滞時にライダーへの 熱負荷が大きい | 精密油冷/水冷システムと アイドリング低減で劇的に改善 |
| パワー | 高回転での伸び悩み | 4バルブ化と吸排気効率向上で 全域トルクアップ |
| 快適性 | アイドリング時の激しい振動 | カウンターバランサー内蔵で 不快な振動のみカット |
その名称は、ハーレーダビッドソンの創業の地であり、現在も本社とミュージアムを構える「ウィスコンシン州ミルウォーキー」への敬意と、このエンジンの技術的ハイライトである「8バルブ(1気筒あたり4バルブ)」構造を組み合わせて名付けられました。
単なる機械的なスペックを表すだけでなく、創業の地に立ち返り、次の100年を見据えたブランドの誇りと魂が込められたネーミングだと感じます。
実際に、開発テストでは合計150万マイル(約240万キロ)以上もの走行テストが行われたと言われており、その完成度は初期モデルから非常に高いものでした。(出典:Harley-Davidson USA「Timeline of Harley-Davidson History」)
つまり、ミルウォーキーエイトとは、「ハーレーらしさを残しながら、世界中のどんな環境でも壊れず、快適に、速く走れるエンジン」という、極めて欲張りな目標を実現した傑作なのです。
第9世代ミルウォーキー8の革新

では、具体的に何が変わったのか。最大の特徴は、その名前の由来にもなっている「8バルブ(1気筒あたり4バルブ)」構造です。従来のツインカムは1気筒あたり2バルブでしたが、これを倍増させることで、空気の通り道が広くなり、吸気と排気の流れ(フロー容量)が約50%も増大しました。
ここがポイント!
バルブが増えたことで燃焼効率が上がり、トルクが全域で約10%向上しています。アクセルをガバッと開けた瞬間の「グワッ」と前に出る力強さは、これまでのハーレーとは一味違います。
また、各シリンダーに2本のプラグを持つ「デュアルスパーク」を採用することで、燃焼室内の火炎伝播を最適化し、燃費性能とクリーンな排ガスを実現しています。
また、個人的に面白いなと思うのが、カムシャフトが1本(シングルカム)に戻ったことです。ツインカム時代はその名の通り2本でしたが、あえて1本に戻すことで、エンジン内部の機械的なノイズ(メカノイズ)を減らしているんです。
チェーン駆動されるカムが1本になることで部品点数が減り、摩擦音も減少しました。雑音が減った分、純粋なマフラーからの排気音がクリアに聞こえるようになったのは、ファンとして嬉しい改良点ですね。
さらに、不快な振動を打ち消す「カウンターバランサー」が内蔵されたことも大きなトピックです。アイドリング時の振動を75%カットするように調整されており、信号待ちでの快適性が劇的に向上しました。
快適性を高める水冷システム

ハーレー乗りにとって永遠の課題といえば「熱」ですよね。特に大排気量の空冷Vツインは、夏場の渋滞ではライダーの太ももを焼くような熱さを発していました。ミルウォーキーエイトでは、この熱対策として非常に賢い冷却システムが採用されています。
大きく分けて、エンジンオイルを使って冷やす「油冷(プレシジョン・オイルクーリング)」と、冷却水を使う「水冷(ツインクールド)」の2種類が存在します。
| 冷却方式 | 主な搭載モデル | 特徴 |
|---|---|---|
| 空冷 | ソフテイルスタンダード等 | 伝統的なフィンによる冷却。 シンプルで造形が美しい。 |
| 油冷 | ストリートグライド等 | シリンダーヘッドの排気 バルブ周辺にオイルを循環させて冷却。 |
| 水冷 | ウルトラリミテッド等 | ロワーフェアリング内にラジエーターを装備。 最も冷却効率が高い。 |
特にウルトラリミテッドなどの重量級ツアラーに採用されている水冷システム(ツインクールド)は秀逸です。足元のロワーフェアリングの中にラジエーターを隠し持ち、最も熱を持つシリンダーヘッドの排気ポート周りをピンポイントで冷却水で冷やしてくれます。
見た目は空冷フィンの美しさを保ちつつ、機能は水冷というハイブリッドな構造なんですよね。これにより、真夏のツーリングでもエンジンの熱ダレを防ぎ、ライダーへの熱負荷を大幅に軽減しています。
アイドリング回転数が従来の1,000rpm前後から850rpmへと引き下げられたことも、発熱を抑えるのに一役買っています。信号待ちで太ももが火傷しそうになるあの感覚は、かなり軽減されました。
ミルウォーキーエイト114と117の比較

ハーレーダビッドソンの購入を検討する際、多くのライダーが直面する最大の悩みどころ。それが「排気量選び」です。
特に現在は、スタンダードなモデルに搭載される「Milwaukee-Eight 114」と、上位モデルやスポーツツーリングモデル(STシリーズ)に搭載される「Milwaukee-Eight 117」が混在しており、この2つの違いについて深く知りたいという声をよく耳にします。
カタログ上の数値だけ見れば、その差はわずか「55cc」です。「たったそれだけ?」と思うかもしれませんが、実際に乗り比べてみると、この2つのエンジンは全く異なるキャラクターを持っていることに気づかされます。
ここでは、スペックシートには現れない「乗り味」の違いや、構造的な差異について深掘りしていきましょう。
現代の「基準」となるMilwaukee-Eight 114 (1,868cc)
まず、Milwaukee-Eight 114ですが、これは現在のハーレーにおける「ど真ん中」のスタンダードエンジンです。ストリートグライドスペシャルやロードグライドスペシャル、そしてブレイクアウト以外のソフテイル上位モデルに広く採用されています。
1,868ccという、国産コンパクトカーをも凌ぐ巨大な排気量から繰り出されるトルクは、まさに「強烈」の一言。しかし、その力の出方は非常にマイルドで扱いやすいのが特徴です。
低回転から厚みのあるトルクが湧き上がり、重い車体を軽々と前に押し出します。街中でのストップ&ゴーはもちろん、タンデム(二人乗り)でキャンプ道具を満載にして高速道路を走るようなシチュエーションでも、パワー不足を感じることはまずありません。
「余裕の塊」です。アクセルを半分も開ければ法定速度に達してしまうため、エンジンを必死に回す必要がなく、結果としてリラックスして長距離を走ることができます。ツーリングメインのライダーには最適な選択肢と言えるでしょう。
「メーカー純正チューンド」Milwaukee-Eight 117 (1,923cc)
一方、Milwaukee-Eight 117は、かつては最高級ラインである「CVO(Custom Vehicle Operations)」にしか許されていなかった、特別なエンジンです。
現在はローライダーSTやブレイクアウト117などにも搭載され、少し身近になりましたが、その中身はまさに「ファクトリーカスタム」の領域です。
114との決定的な違いは、単なる排気量アップだけではありません。ここが非常に重要なポイントなのですが、117エンジンには「高性能カムシャフト」と「大容量吸気システム(ヘビーブリーザー等)」が標準で組み込まれています。
- ハイフロー・インテーク:
前方に突き出したキノコ型のエアクリーナーが、大量の空気をエンジンに送り込みます。 - 専用カムシャフト:
バルブが開いている時間を調整し、中高回転域でのパワーの伸びを重視したセッティングになっています。
この組み合わせにより、117はアクセルを開けた瞬間の吸気音からして違います。「シュゴォォォ!」という凄まじい吸気音とともに、レッドゾーンまで淀みなく、暴力的な加速を見せつけます。114が「力持ちの横綱」だとすれば、117は「筋肉隆々のアスリート」のような俊敏さがあるのです。
スペックとフィーリングの比較まとめ
それぞれの違いを分かりやすく表にまとめました。数値以上に、乗った時のフィーリング差が大きいことをイメージしてください。
| 比較項目 | Milwaukee-Eight 114 | Milwaukee-Eight 117 |
|---|---|---|
| 排気量 | 1,868cc (114 ci) | 1,923cc (117 ci) |
| 最大トルク目安 | 約155-160 Nm | 約165-170 Nm |
| エンジンの性格 | 全域フラットトルク型 (扱いやすさ重視) | 中高回転パワー型 (刺激と伸び重視) |
| 吸気システム | 標準ベンチレーター等 | ヘビーブリーザー等 (ハイフロータイプ標準) |
| おすすめな人 | ・長距離ツーリング派 ・ゆったり流したい人 ・コストパフォーマンス重視 | ・刺激的な加速が欲しい人 ・純正最強スペックにこだわる人 ・峠道も楽しみたい人 |
私が実際に乗り比べて感じたのは、「追い越し加速のドラマチックさ」の違いです。114はアクセルを開けると「ズズズズッ」と地面を蹴って加速しますが、117は「カァァァン!」と弾けるように加速します。
特に3,000回転を超えてからの伸びは、117ならではの病みつきになる中毒性がありますね。
結論として、街乗りやのんびりとしたツーリングがメインなら、114でも十分すぎるほどの性能を持っていますし、扱いやすさでは勝る場面もあります。
しかし、「ここ一番での速さ」や「マシンの限界性能」にロマンを感じる方、あるいは後からカスタムでエンジンをいじるくらいなら最初から完成されたものが欲しいという方は、迷わずハイパフォーマンスな117を選ぶべきです。その価格差以上の興奮が、あなたを待っています。
ミルウォーキーエイトがつまらないは本当か?

ネット検索で「ミルウォーキーエイト」と打つと、「つまらない」というサジェストが出てきて不安になった方もいるかもしれません。これは主に、振動が減ってスムーズになりすぎたことに対する、古くからのファンの感想だと思います。
確かに、ショベルヘッドやエボリューションのような、内臓が揺さぶられるような荒々しい振動は影を潜めました。実はこのエンジン、アイドリング時の振動を75%も削減するカウンターバランサーを内蔵しているんです。
そのおかげで、信号待ちでミラーがブレて何も見えない…なんてことはなくなりました。
しかし、これを単に「味が薄くなった」と切り捨てるのは早計です。実際に長距離を走ってみるとわかるのですが、不快な微振動が消えたことで、長距離を走った後の疲労感は段違いに軽いのです。手が痺れたり、お尻が痒くなったりすることが激減しました。
また、振動が減ったことで、エンジンの回転上昇が非常にスムーズになり、「回して走る楽しさ」という新しい魅力を発見できます。
個人的には、決してつまらないエンジンではなく、「古き良き鼓動感」と「現代的な快適性・スポーツ性能」のバランスを極限まで突き詰めた結果、「走る楽しさ」の質が変わったと感じています。
失敗しないミルウォーキーエイトの中古選び

中古車を検討している方にとって、最も気になるのが信頼性でしょう。ミルウォーキーエイトは基本的には非常に頑丈なエンジンですが、実は初期モデル(主に2017年〜2019年前半に製造された車両)には、「サンプピング(Sumping)」と呼ばれる特有のトラブルが報告されています。
エンジンオイルがクランクケース内に溜まりすぎてしまい(スカベンジ不良)、パワーダウンやエンジンの過熱、エアクリーナーへのオイル吹き返し、最悪の場合は故障につながる現象です。高速道路での高回転巡航など、高負荷な走行条件で発生しやすいと言われています。
この問題に対し、ハーレーダビッドソンは数回にわたる改良を行い、決定的な解決策として2020年モデルからはオイルポンプの容量を増やした対策品(8ローブ・オイルポンプ)を標準採用しました。そのため、2020年式以降のモデルであれば、この心配はほぼありません。
もし2017〜2019年モデルの中古車を狙う場合は、必ず販売店に「オイルポンプが対策品に交換されているか」を確認してください。
また、トランスミッションオイルがプライマリーケース側に移動してしまう現象(Fluid Transfer)についても、対策キット(ベント追加)が施工されているかチェックするのが賢明です。これらの履歴は、正規ディーラーであれば記録が残っているはずです。
購入前には、必ずメーカー公式のリコール情報なども参照し、対象車両かどうかの確認を行うことを強くおすすめします。
(出典:ハーレーダビッドソン ジャパン「リコール照会」)
ハーレーのミルウォーキーの維持とカスタム
念願のミルウォーキーエイトを手に入れたら、そこからが本当の「ハーレーライフ」の始まりです。
納車されたそのままの状態で乗るのももちろん素晴らしいですが、自分だけのスタイルに合わせて手を加えていくカスタムや、長く調子を維持するためのメンテナンスは、オーナーだけに許された特権であり、至福の時間でもあります。
ただ、最新のテクノロジーが詰め込まれたミルウォーキーエイトには、ショベルやエボリューションといった旧車とは異なる「現代の作法」が存在します。
ここでは、多くのオーナーが直面する疑問や、最新エンジンならではのカスタムのポイントについて、プロの視点とオーナー目線を交えて深掘りしていきましょう。
三拍子を実現するカスタム

「ドコドコドコ…」という、まるで馬の蹄音のようなリズム。いわゆる「三拍子(ポテトサウンド)」は、ハーレーダビッドソンを象徴するサウンドであり、多くのライダーが憧れる聖域です。
私の元にも「ミルウォーキーエイトで三拍子を出したい」という相談は毎日のように届きます。
正直に申し上げますと、ミルウォーキーエイトで、かつてのショベルヘッドのような「完全な三拍子」を再現するのは、構造的に少しハードルが高いのが現実です。
しかし、諦める必要はありません。現代的なアプローチで「三拍子テイスト」を実現することは十分に可能です。ここではその仕組みとリスク、そして実現方法を包み隠さずお話しします。
なぜミルウォーキーエイトは三拍子が出にくいのか?
最大の理由は、「アイドリングの高さ」と「フライホイールの軽さ」、そして「高度な電子制御」にあります。
- アイドリング回転数:
旧車が600〜700rpmで回っていたのに対し、ミルウォーキーエイトの純正アイドリングは850rpm(モデルによっては950rpm)付近に設定されています。これは発電量の確保や油圧の維持のためです。 - フライホイール:
レスポンスを良くするために軽量化されており、低回転での「粘り」が出しにくい構造です。 - 燃焼制御:
コンピューターが常に「安定して回ろう」と補正を入れるため、リズムを崩す(=三拍子にする)ことを拒もうとします。
最大のリスク「油圧低下」と対策
ここで絶対に知っておいていただきたい注意点があります。それは「回転数を下げすぎるとエンジンが壊れる」というリスクです。
【警告】無理なローアイドルは命取りです
ミルウォーキーエイトは、エンジンの熱を冷やすためにもオイルを循環させています。また、バルブクリアランスを自動調整する「ラッシュアジャスター」も油圧で作動しています。
アイドリングを極端に(例えば700rpm以下など)下げてしまうと、油圧ポンプの吐出量が不足し、エンジンの焼き付きや異音の発生、カム周りの破損につながる危険性が非常に高いのです。
「じゃあ無理なの?」と思われるかもしれませんが、安全マージンを確保したギリギリのラインがあります。それが一般的に「800rpm前後」と言われています。この回転域であれば、適切なオイル循環を確保しつつ、ドコドコとした鼓動感を強調することができます。
現代流「三拍子風」カスタムの最適解
では、どうやってそのリズムを作るのか。具体的なステップは以下の通りです。
| ステップ | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 1. インジェクション チューニング | 「ディレクトリンク」や「FP4」などのデバイスを使用し、 車載コンピューター(ECM)のデータを書き換えます。 | アイドリングを800rpmまで下げ、 点火タイミングと燃料噴射量を調整して、 意図的に「不整脈」のようなリズムを作ります。 |
| 2. カムシャフト交換 | S&SやT-manなどの 社外パフォーマンスカム(トルクカム)に交換します。 | バルブが開いている時間(オーバーラップ)が変わることで、 吸排気の脈動が強くなり、アイドリング時の音が 「バラついた」迫力あるものに変化します。 |
| 3. マフラーの選定 | 歯切れの良い重低音が出るマフラーを選びます。 | どんなにリズムを作っても、マフラーが静かすぎたり 音質が高すぎると三拍子には聞こえません。 |
特に効果的なのが「ハイカム(トルクカム)への交換」です。純正カムは非常にマイルドでスムーズに回るように設計されていますが、社外カムを入れると、アイドリング時に独特の「乱れ」が生じます。
これとインジェクションチューニングによる800rpm設定を組み合わせることで、「ドッドッドッ…」という歯切れの良い、ミルウォーキーエイトならではの新しい三拍子が完成します。
昔のエンジンのような「今にも止まりそうな頼りない三拍子」を目指すのではなく、「力強く、脈打つような鼓動感」を目指すのが、ミルウォーキーエイトを楽しむ正解ルートだと私は思います。
愛車の健康を守りつつ、心地よいサウンドを手に入れるために、ぜひ経験豊富なプロショップと相談しながらセッティングを煮詰めてみてください。
三拍子の世界は奥が深いです。もっと体系的に理解したい方は、ハーレーの三拍子の仕組みとリスクとは?費用ややり方を徹底解説を合わせて読んでおくと、全体像がスムーズに掴めると思います。
カム交換で本来の性能を開放

ミルウォーキーエイトに乗るなら、ぜひ検討してほしいのが「カム交換」です。これは現代ハーレーのカスタムにおいて、最も費用対効果が高いと言われています。
実は純正の状態だと、厳しい排ガス規制や騒音規制をクリアするために、エンジンが本来持っているポテンシャルがかなり抑えられているんです。
カムシャフトを社外のハイパフォーマンスなもの(例えばS&S製の465や475カムなど)に交換し、合わせて吸排気(マフラーとエアクリーナー)と燃調(インジェクションチューニング)をセッティングすることで、まるで別のバイクになったかのように激変します。
具体的には、3,000回転付近からの加速が爆発的に向上し、エイト 114などの大排気量モデルでカム交換をすると、アクセルを開けた瞬間に体が置いていかれるような加速感を味わえます。
トルク重視のカムにするか、高回転パワー重視のカムにするかでキャラクターも選べるので、「あ、これが本来の姿だったのか!」と感動すること間違いなしです。
初心者でもできるオイル交換

メンテナンスの基本であるオイル交換。ミルウォーキーエイトは整備性も考慮されており、手順さえ覚えれば自分で行うことも難しくありません。基本的には、以下の3種類のオイルを交換します。
| エンジンオイル | エンジンの潤滑と冷却を担当。最も汚れやすい。 |
| プライマリーオイル | クラッチやチェーンを潤滑。 |
| ミッションオイル | ギアの摩耗を防ぐ。 |
オイル選びの注意点
最新のエンジンは精度が高いため、指定された粘度やグレードを守ることが大切です。
特にエンジンオイルは、空冷大排気量エンジンの過酷な熱に耐えるため、100%化学合成油(SYN3など)の使用が強く推奨されます。安価な鉱物油は熱ダレを起こしやすく、エンジンの寿命を縮める可能性があります。
交換作業自体は、ドレンボルトの位置さえ間違えなければ難しくありませんが、廃油の処理やドレンボルトの締め付けトルク管理(締めすぎによる破損に注意!)など、基本的な工具と知識は必要です。
最初はショップで作業を見せてもらうか、詳しい友人と一緒に行うのが良いでしょう。自分でオイル交換をすると、愛車への愛着がさらに湧きますよ。
実はオイル交換って、一番身近で楽しいメンテナンスなんです。ハーレーのオイル交換費用の相場と節約術を徹底解説【初心者必見】を読めば、きっとあなたも次の休みにガレージで作業したくなりますよ。
バッテリートラブルを防ぐコツ

意外と見落としがちなのがバッテリーです。ミルウォーキーエイトは大排気量で、しかも圧縮比が高い(10.0:1以上)ため、冷えた重いクランクシャフトを回してエンジンを始動させるには、非常に大きな電力(クランキングアンペア)が必要です。
そのため、バッテリーが少しでも弱っていると、「カカカ…」という音だけでエンジンがかからないトラブルに直結しやすいのです。
また、最近のモデルはセキュリティシステムが標準装備されており、キーオフの状態でも常に微弱な待機電力を消費しています。そのため、2週間以上乗らないだけでバッテリー上がりを起こすことも珍しくありません。
対策としては、乗らない時は常にバッテリーテンダー(維持充電器)を繋いでおくことを強くおすすめします。純正で充電用のカプラーが出ている車両も多いので、接続は簡単です。
ツーリングの朝にエンジンがかからない絶望感は筆舌に尽くしがたいものがありますので、転ばぬ先の杖として充電器は必須アイテムと言えるでしょう。
ハーレーのミルウォーキーの魅力を総括
ここまで、ハーレーダビッドソンの最新心臓部である「ハーレーのミルウォーキー」について、その革新的な構造から、中古車選びの注意点、そして三拍子カスタムの裏技まで、かなりディープにお話ししてきました。最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。
正直に申し上げますと、私が初めてこのミルウォーキーエイトに乗った時、あまりの完成度の高さに「これは本当にハーレーなのか?」と少し戸惑ったのを覚えています。
振動はマイルドで、メカノイズも静か。どこまでもスムーズに回るエンジン…。古くからのファンが「味が薄い」と感じる気持ちも、痛いほどよく分かります。
しかし、長く付き合えば付き合うほど、このエンジンの「真の凄み」が見えてきました。それは、「ハーレーらしい鼓動感」を残しながら、「圧倒的な信頼性と快適性」を手に入れたという点です。
私がミルウォーキーエイトをおすすめする理由
- 旅の範囲が広がる:
故障の不安や身体への疲労が激減したため、今まで躊躇していた長距離ツーリング(例えば北海道一周や九州縦断など)に、自信を持って出かけられるようになります。 - カスタムのポテンシャル:
カム交換一つで別人のような荒々しいキャラクターに変貌します。「育てがい」のあるエンジンです。 - 夏の快適さ:
アイドリングの低減や冷却システムの進化により、日本の過酷な夏でもオーバーヒートを恐れずに乗れます。
初期モデルに見られたサンプピング問題なども、メーカーの迅速な対応により解決策が確立されています。
対策済みの車両を選び、適切なオイル管理さえ行っていれば、ミルウォーキーエイトはハーレー史上最も頑丈で、最も信頼できるパートナーになってくれるはずです。
「壊れるのが怖いから…」「維持費が心配だから…」と二の足を踏んでいる方がもし居たら、私は声を大にして言いたいです。「今のハーレーミルウォーキーなら大丈夫だ」と。
このエンジンは、あなたがアクセルを開けるのを待っています。純正のままで優雅にクルージングするもよし、カムを換えて暴力的な加速を楽しむもよし。
ぜひ、この新時代の鉄馬と共に、まだ見ぬ景色を見に行きませんか?あなたのハーレーライフが、このエンジンによって最高にエキサイティングなものになることを、心から願っています。

