こんにちは。高級モトクラブ、運営者の「A」です。
「まさか、あの883がもう新車で買えないなんて嘘だろう?」
このページに辿り着いたあなたは、おそらくそんな信じられない気持ちで「ハーレー 883 新車 買えない」と検索されたのではないでしょうか。
長年にわたりハーレーダビッドソンの象徴であり、多くのライダーにとって憧れの入り口だったスポーツスター883(パパサン)。その供給が完全にストップしたという事実は、私たちファンにとって単なるモデル廃盤以上の衝撃を与えました。
現在、ネット上には「価格暴落の噂」や「復活への期待」、「維持費への不安」など、真偽不明の情報が溢れかえっています。新車という定価のある基準を失った今、中古車市場はまるで荒波のように価格が乱高下しており、正しい知識がないまま飛び込むのは非常にリスクが高い状態と言わざるを得ません。
そこで本記事では、私たち高級モトクラブが独自に収集した市場データと、現場の生の声をもとに、883を取り巻く「今」を徹底的に解剖しました。感情論だけでなく、資産価値やメカニズムの観点からも冷静に分析しています。
この記事を最後まで読んでいただければ、以下の疑問や不安がすべてクリアになるはずです。
- 883が新車で手に入らなくなった構造的な理由
- 高騰と下落を繰り返す中古市場の最新トレンド
- 後継モデルであるナイトスターや競合車の実力
- 今から883を手に入れるための具体的な戦略
ハーレー883の新車はなぜ買えない?
「ハーレーのディーラーに行けば、いつでも883が並んでいる」
ほんの数年前まで、それは私たちバイク乗りにとって当たり前の光景でした。しかし2025年の今、その常識は完全に過去のものとなりました。
なぜ、60年以上も愛され続け、日本でも「ハーレー入門の決定版」として不動の地位を築いていたモデルが、突如として姿を消さなければならなかったのでしょうか。
多くの人が「人気がなくなったから生産終了したのでは?」と誤解していますが、実は全く逆です。883は最後まで売れに売れていました。
それにも関わらず生産を打ち切らざるを得なかった背景には、単なるモデルチェンジの枠には収まらない、メーカーが直面した「物理的な限界」と「冷徹な経営判断」という2つの大きな壁が存在したのです。
ここでは、なぜ私たちが愛した空冷スポーツスターが市場から退場せざるを得なかったのか、その複雑に入り組んだ事情を紐解いていきます。
883の生産は中止?終了の背景

まず結論から申し上げますと、883を含む空冷スポーツスターの生産は、日本市場向けを含め完全に終了しています。これは一時的な部品不足や在庫調整ではなく、メーカーによる恒久的な生産停止の決定です。
環境規制「ユーロ5」と「令和2年排出ガス規制」の壁
最大の要因は、世界的に厳格化された環境規制です。特に欧州の「ユーロ5」および、それに準拠した日本の(出典:国土交通省『自動車局』)による「令和2年排出ガス規制」の施行が決定打となりました。
ハーレーダビッドソンの象徴である「空冷45度Vツインエンジン」は、その名の通り走行風をエンジンフィンに当てて冷却を行うシンプルな構造をしています。
しかし、この構造はエンジンの燃焼温度を一定に保つことが非常に困難です。現代の厳しい排ガス規制では、CO(一酸化炭素)やNOx(窒素酸化物)の排出を極限まで減らすことが求められますが、そのためには「リーンバーン(希薄燃焼)」といって、ガソリンの比率を下げた薄い混合気を燃やす必要があります。
ここで技術的なジレンマが発生します。空冷エンジンでリーンバーンを行うと、燃焼温度が異常に上昇し、冷却が追いつかずにオーバーヒートを起こしたり、高温で発生しやすいNOxが急増したりしてしまうのです。
これを防ぐために燃料を濃くすれば規制に引っかかり、薄くすればエンジンが壊れる。この「物理的な限界」に達してしまったのが、生産終了の真実です。
日本市場での「サヨナラ」なき撤退
日本市場においては、2021年モデルが事実上のラストイヤーとなりました。非常に残念だったのは、人気モデルであったXL1200Xフォーティエイトには「ファイナルエディション」という華々しい限定車が用意された一方で、XL883Nアイアンを含む883シリーズには、明確な終了アナウンスや記念モデルが設定されなかったことです。
そのため、多くのファンが「いつの間にかカタログから消えていた」「気づいたら買えなくなっていた」という喪失感を味わうことになりました。
ハーレーダビッドソンの戦略転換

「買えない」理由は規制という外的要因だけではありません。ハーレーダビッドソン社自身の経営方針が、ここ数年で劇的に変化したことも大きく関係しています。
「The Hardwire」戦略の衝撃
ハーレーダビッドソンは現在、CEOヨッヘン・ツァイツ氏の指揮のもと、「The Hardwire(ハードワイヤー)」と呼ばれる5ヶ年戦略を推進しています。これは、かつての「販売台数至上主義」から決別し、「ブランド価値の向上」と「利益率の最大化」へ舵を切るというものです。
私たちユーザーからすれば、883(スポーツスター)は「100万円ちょっとで買える、最高にクールなハーレー」として、ブランドへの入り口(エントリーモデル)の役割を果たしていました。しかし、メーカーの視点で見ると、883は部品点数や製造コストがかかる割に、車両価格が安く、利益率が低いモデルだったと言われています。
プレミアムブランドへの回帰
新しい戦略では、ハーレーを「誰もが乗れるバイク」から「選ばれた人が乗るプレミアムな乗り物」へと再定義しようとしています。そのため、エントリー層向けに安価な空冷スポーツスターを作り続けるよりも、より高機能で、より高価格帯(200万円〜)の水冷次世代モデルへリソースを集中させる判断が下されました。
つまり、883が買えなくなったのは、単に「作れなくなった」だけでなく、「安売りをやめるために作らなくなった」というメーカーの意思表示でもあるのです。少し寂しい話ですが、これがグローバル企業の生存戦略なのかもしれません。
ハーレー新車の供給停止と規制

2025年現在、全国のハーレー正規ディーラーを訪れても、新車の空冷883が展示されていることはありません。ショールームの主役は、水冷エンジン「Revolution Max」を搭載したスポーツスターSやナイトスター、あるいは大排気量のソフテイルファミリーに完全に入れ替わっています。
在庫車の蒸発と供給の断絶
生産終了が噂され始めた2021年後半から、市場では凄まじい「駆け込み需要」が発生しました。ディーラーにあった在庫車は瞬く間に成約済みとなり、展示車さえも抽選販売されるような事態となりました。その結果、現在では正規ルートで新車の883を購入する術は完全に断たれています。
OBD2搭載義務化の影響
さらに、法規制の側面では「OBD2(車載式故障診断装置)」の搭載義務化も影響しています。これはエンジンの不調や排ガスの異常を監視し、記録する装置の搭載を義務付けるものですが、古い設計の空冷エボリューションエンジンに、このような高度な電子制御システムを後付けで統合するには、莫大な開発コストがかかります。
これからバイクに乗ろうとしている方にとっては、「昔ながらの鉄のバイク」が新車で手に入らないという、非常に選択肢の狭い時代になってしまったと言えるでしょう。
xl883nが愛される物理的特性

なぜ最新技術の塊である水冷モデルではなく、設計の古いXL883N(883)がこれほどまでに渇望されるのでしょうか。その答えは、スペック表の馬力やトルクの数値ではなく、ライダーの五感に訴えかける「感覚性能」にあります。
ロングストロークが生む「魔法のトラクション」
883に搭載されているエボリューションエンジンのボア(内径)×ストローク(行程)は、76.2mm×96.8mmという、現代のバイクでは珍しいほどの「ロングストローク」設定になっています。これが何を意味するかというと、ピストンがシリンダーの中を長い距離をかけて往復するということです。
この構造により、883は低回転域でアクセルを開けた瞬間に、路面を「蹴り出す」ような強烈なトラクション(駆動力)を生み出します。回転数でパワーを稼ぐのではなく、一発一発の爆発力で前に進む感覚。これこそが「ハーレーに乗っている」という実感の正体です。
重たいフライホイールと「三拍子」のリズム
また、エンジンの回転を滑らかにする「フライホイール」という部品が、883は非常に重く設計されています(特に2003年以前のリジッドマウントモデル)。この重たい鉄の塊が回る慣性力によって、アイドリングでは「ドッドッドッ」という不整脈のような鼓動感が生まれ、走り出せば粘り強くエンストしにくい特性を発揮します。
現代の水冷エンジンは、効率化のために部品が軽量化され、バランサーで振動を消してしまうため、どうしてもモーターのようなスムーズな回転フィールになりがちです。不器用だけど温かみがある、生き物のようなエンジンの鼓動は、883でしか味わえない唯一無二の物理現象なのです。
883アイアンの不滅の人気理由

数あるスポーツスターファミリーの中でも、特に「XL883N アイアン」は日本市場において圧倒的な人気を誇り、中古市場でも高値を維持し続けています。その理由は、デザインと排気量の絶妙なマッチングにあります。
メーカー純正の「ダークカスタム」
2009年に登場したアイアンは、それまでの「メッキでピカピカ」というハーレーの常識を覆し、エンジンやマフラー、ホイールに至るまで徹底的にブラックアウト(黒塗り)されたモデルでした。
切り詰められたリアフェンダー、クラシックなフォークブーツなど、本来なら購入後に数十万円かけてカスタムするような「ボバースタイル」が、純正状態で完成されていたのです。
「買ってそのまま乗ってもカッコいい」「どんな服装でも似合う」というファッション性の高さが、従来のハーレーファンだけでなく、若い世代やファッション感度の高い層を惹きつけました。
「883cc」こそが至高という逆説
一般的にバイクは排気量が大きい方が上位互換とされますが、スポーツスターにおいては「1200ccよりも883ccの方が楽しい」という意見が多く聞かれます。
1200ccモデルはボアを広げているためピストンが大きく重く、吹け上がりが少し荒々しくなります。対して883は、シリンダーの肉厚があり、ピストンも軽いため、エンジンの回転上昇が非常にマイルドでスムーズです。
日本の道路事情、特に信号の多い街中や、狭い峠道において、1200ccのパワーは持て余しがちです。しかし883なら、アクセルを大きく開けて「エンジンを使い切る」楽しみがあります。「遅い」のではなく「扱いやすい」。この手の内にある感覚が、日本のライダーにとって最高の相性だったと言えるでしょう。
ハーレー883の新車が買えない対策
「新車がないなら、もう程度の良い883に乗ることは不可能なのか?」
そんなふうに悲観する必要はありません。確かに、ショールームでピカピカの新車をオーダーし、納車を待つというワクワク感はもう味わえないかもしれません。
しかし、新車供給が絶たれた今だからこそ、中古車市場には過去数十年にわたって生産された「歴代の883」がすべて並んでいるとも言えます。
私たちが取るべきアクションプランは、新車を探し回る無駄な努力をやめ、「自分にとって最高の中古車」を見極めるための知識と選定眼を養うことに他なりません。
幸いなことに、ハーレーのエンジン、特に空冷エボリューションは、適切なメンテナンスさえ受けていれば10万キロでも平気で走る頑丈さを持っています。正しい対策と戦略を持てば、新車以上に愛着の湧く一台に出会えるはずです。
良質な中古883を探すポイント

戦場は完全に中古車市場に移りました。一時期は「中古車価格が新車の1.5倍」という異常なバブル状態にありましたが、2025年現在はその熱狂も落ち着きを見せ、適正価格に戻りつつあります。これは私たち購入者にとって追い風です。
しかし、883は人気モデルであるがゆえに、粗悪な個体や、相場より不当に高く設定された車両も混在しています。ここでは、失敗しないための「目利き」のポイントを深掘りしていきましょう。
1. 狙い目の年式と「3つの時代」を理解する
一口に「883」と言っても、製造された年代によって乗り味は全くの別物です。見た目は似ていても、中身は大きく3つの世代に分かれます。自分が求めているのは「激しい鼓動」なのか、「快適なツーリング」なのか、まずはここを明確にしましょう。
| 年代 | 通称・仕様 | こんな人におすすめ(メリット・デメリット) |
|---|---|---|
| 〜2003年 | リジッドマウント (キャブレター) | 【鼓動感重視の玄人向け】 エンジンがフレームに直付けされており、ダイレクトな振動が味わえます。 車体がスリムで軽量ですが、振動でボルトが緩むなどの 「ハーレーらしい手のかかる一面」も。相場は高騰傾向です。 |
| 2004〜2006年 | ラバーマウント (キャブレター) | 【希少な過渡期モデル】 エンジンをゴム介してマウントすることで不快な振動をカット。 それでいて「キャブ車」特有の三拍子リズムが出しやすい、 わずか3年間しか製造されなかったレアな世代です。 |
| 2007〜2021年 | インジェクション (EFI) | 【安心・快適な現代版】 電子制御燃料噴射により、冬場でもセル一発で始動可能。 故障も少なく、タンク容量などのバリエーションも豊富です。 人気の「XL883N アイアン」はこの世代に含まれます。 |
初心者の方や、メンテナンスに自信がない方には、間違いなく2007年以降のインジェクションモデルをおすすめします。
「キャブ車の方が味が濃い」という意見もありますが、毎回のエンジン始動で儀式のような操作を強いられるより、いつでも気軽に乗れることの方が、長く付き合う上では重要だったりしますからね。
2. 実車確認でチェックすべき「消耗とカスタム」の罠
ネットの写真だけで購入を決めるのはギャンブルです。可能な限り現車を確認し、以下のポイントをチェックしてください。
⚠️ ロッカーカバーからのオイル滲み
エンジンの最上部(ロッカーカバー)のガスケット劣化は、スポーツスターの「持病」です。シリンダーのフィンにオイルが滲んで黒ずんでいないか確認しましょう。修理には数万円かかりますが、これを理由に値引き交渉ができる場合もあります。
⚠️ 過度なDIYカスタムと配線地獄
「カスタム済みでお得!」という車両には注意が必要です。特に素人がDIYで配線処理をした車両は、接触不良や漏電のリスクがあります。シート下やタンク下の配線がグチャグチャになっていないか、ビニールテープで雑に巻かれていないかを確認しましょう。基本的には「ノーマルに近い個体」を選び、後から自分でカスタムする方が安全です。
3. 「車検対応」と「信頼できる販売店」の重要性
中古車選びで盲点になりがちなのが「車検」です。特にマフラーやエアクリーナーが社外品に交換されている場合、「純正パーツ(ノーマルパーツ)」が付属しているかは死活問題です。
今の車検制度は排ガスや音量規制に非常に厳しく、純正マフラーがないと車検に通すためにヤフオク等で高額な純正品を買い直す羽目になります。
また、走行距離の改ざん(メーター戻し)がないかどうかも重要です。信頼できる販売店であれば、オークション会場や管理システムを通じて走行距離の裏付けを取っています。
心配な方は、公正な取引を推進する公的機関の加盟店であるか、走行距離管理システムを導入しているかを確認することをおすすめします。(出典:公益社団法人自動車公正取引協議会)
「安物買いの銭失い」にならないよう、車両価格の安さだけでなく、納車整備の内容や保証期間、純正パーツの有無を含めたトータルコストで判断することが、良質な883と出会うための最短ルートです。
レッドバロンで探すメリット

中古車購入の選択肢として、個人売買(ヤフオク・メルカリ等)や地元のバイク屋さんなどがありますが、ハーレー初心者やメカに詳しくない方には、やはりレッドバロンのような全国チェーンの大手販売店を強くおすすめします。
「イントラネット」による圧倒的な在庫検索
レッドバロンの強みは、全国300店舗以上の在庫を共有する「イントラネット」システムです。近所の店舗に883がなくても、全国の店舗から希望の年式・カラー・価格帯の車両を探し出し、最寄りの店舗に取り寄せて現車確認することができます。タマ数が減っている883を探す上で、このネットワークは最強の武器になります。
旅先でのトラブル対応と「譲渡車検」
ハーレーに乗れば、ロングツーリングに出かけたくなるものです。しかし、出先で故障した際、個人店で購入したバイクだと現地のバイク屋さんに修理を断られるケースが少なくありません。全国チェーンであれば、北海道で壊れても現地の店舗で修理やロードサービスを受けられます。
また、レッドバロン独自の「譲渡車検」制度付きの車両であれば、消耗品交換や詳細な点検が行われた状態で納車されるため、中古車特有の「買ってすぐ壊れる」リスクを大幅に減らすことができます。安心をお金で買うという意味でも、検討する価値は十分にあります。
後継モデルのナイトスターを評価

ハーレーダビッドソンが公式に「スポーツスターの後継」として市場に投入したのが、新開発の水冷エンジン「Revolution Max 975T」を搭載したナイトスター(Nightster)です。果たしてこれは883の代わりになるのでしょうか。
性能は「別次元の乗り物」へ
スペックだけで見れば、ナイトスターは883を完全に過去のものにしています。最高出力は約2倍近くまで向上し、車体重量は数十キロも軽量化されました。ライドモード選択(スポーツ/ロード/レイン)やトラクションコントロールまで装備されており、走り出しの軽さやコーナーリングの鋭さは、もはやスポーツバイクそのものです。
「コレジャナイ」感との葛藤
しかし、883ファンが試乗すると、多くの人が複雑な表情を浮かべます。「速いし軽いし、すごく良いバイクだ。でも、これはハーレーなのか?」という疑問です。
水冷化された60度Vツインエンジンは、高回転までシュンと回りますが、空冷時代のような「ドコドコ感」や「鉄の塊またがっている重厚感」は希薄です。また、プラスチックパーツが多用された外装に対し、「高級感が足りない」という厳しい意見もあります。
ただし、これは「883と比較するから」感じる不満であって、全く新しいモダンなクルーザーとして見れば、非常に完成度の高いバイクです。「古いハーレーの不便さや振動は嫌だ、でもハーレーというブランドに乗りたい」という新しい層にとっては、むしろ最適な選択肢と言えるでしょう。
他メーカーの後継機候補比較

「新車の883が買えないなら、もはや他メーカーの似たバイクを選ぶのも、非常に合理的で賢い選択ではないか?」
ここまで883への愛を語っておいて何ですが、私自身、そう考えることは決して「妥協」だとは思いません。むしろ、ハーレーというブランドの呪縛から解き放たれてフラットな目線で市場を見渡すと、883が抱えていたネガティブな要素(故障のリスク、維持費の高さ、装備の古さ)を見事に解決した、魅力的なライバルたちが存在することに気づきます。
特に、「883難民」の受け皿として優秀な、性格の異なる2台の傑作モデルについて深掘りしてご紹介します。
ヤマハ・ボルト (BOLT):最も近い「和製スポーツスター」
ヤマハの「ボルト」は、開発段階からハーレーのスポーツスターを徹底的に研究し、ベンチマークとして作られたモデルです。941ccの空冷Vツインエンジン、スリムなボバースタイル、ベルトドライブなど、構成要素は883と瓜二つ。
「パクリだ」なんて野暮なことを言う人もいますが、実車に乗ればそれが「最高のリスペクト」から生まれたことが分かります。
特筆すべきは、そのエンジンフィーリングです。本家ハーレーが規制対応でマイルドになっていく中で、ヤマハはあえて「鼓動感(パルス感)」を強調するセッティングを施しました。アクセルを開けた時の地面を蹴るようなドコドコ感は、ノーマルの883以上に「鉄馬」を感じさせるほどです。
ボルト最大の魅力は、なんといっても「壊れにくい」ことです。オイル漏れに怯える必要もなければ、インチ工具を揃える必要もありません。部品代も国産価格。
「883のスタイルと鼓動感は好きだけど、故障や維持費の高さは嫌だ」という現実的なライダーにとって、ボルトはまさに理想を具現化した「実質883」になり得ます。
ホンダ・レブル 1100 (Rebel 1100):現代的最適解
一方、ホンダの「レブル1100」は、883とは全く異なるアプローチでクルーザーの正解を導き出した「ハイテクマシン」です。
搭載されるエンジンは、アドベンチャーモデル「アフリカツイン」譲りの水冷並列2気筒。これをクルーザー向けにチューニングしており、アクセルを捻ればスポーツバイク顔負けの加速を見せます。883が「味わい」のバイクなら、レブル1100は「快適と性能」のバイクです。
最大の特徴は、ホンダ独自の技術である「DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)」モデルの存在です。クラッチレバー操作が不要で、オートマチックのように走れるため、渋滞やロングツーリングでの疲労感は劇的に軽減されます。
883には付いていない(または高額なオプションだった)装備が、レブルには標準、あるいは安価で装備可能です。
・グリップヒーター
・クルーズコントロール(高速道路で速度を自動維持)
・ETC2.0車載器
・選べるライディングモード(雨の日モードなど)
「スタイルはワイルドに決めたいけれど、中身は最新の快適なバイクがいい」。そんな現代のライダーのわがままを、ホンダの技術力がすべて叶えてくれています。
「鼓動と雰囲気」を取ってヤマハのボルトにするか、「圧倒的な快適性能」を取ってホンダのレブルにするか。あるいは、意地でも中古の883を探すか。どれを選んでも、あなたのバイクライフは間違いなく充実したものになるはずです。
883をチョッパーへのカスタム

「新車が買えない」という状況を、逆転の発想で捉えてみましょう。あえて中古の883を選ぶ最大のメリット、それは「カスタムの自由度」が無限大に解放されることです。
新車で購入した場合、メーカー保証の継続やディーラーとの関係を気にして、マフラー一本変えるのにも躊躇してしまうのが人情です。しかし、保証期間が過ぎた中古車であれば、誰に遠慮する必要もありません。
フレームを切ろうが、色を塗り替えようが、全てはオーナーであるあなたの自由。この「精神的な解放」こそが、中古車ベースで楽しむハーレーライフの真骨頂です。
世界一のアフターパーツ市場という「沼」
空冷スポーツスター(特に1986年〜2021年のエボリューションモデル)は、バイクの歴史上、最もカスタムパーツが豊富なモデルの一つと言われています。シート、タンク、ハンドル、マフラー、エアクリーナー……。
世界中のパーツメーカーが何十年にもわたって開発競争をしてきたため、カタログは電話帳のような厚さになり、世の中には数え切れないほどのパーツが存在します。
極端な話、フレームとエンジンさえあれば、他の部品はすべて社外パーツで組み上げることも可能なほどです。これは、発売から日が浅く、パーツの選択肢が限られる新型ナイトスターには絶対に真似できない強みです。
883の素材を活かした「3大カスタムスタイル」
では、具体的にどのようなスタイルが人気なのでしょうか。883のコンパクトな車体と美しいVツインエンジンは、どんなスタイルにも染まりますが、特に定番かつ王道とされる3つのスタイルをご紹介します。
| スタイル | 特徴・定義 | 883との相性 |
|---|---|---|
| チョッパー (Chopper) | 不要なものを削ぎ落とし(Chop)、 フロントフォークを伸ばしたり、 極小のタンクを付けたりするスタイル。 | 【王道にして至高】 883のエンジン造形美が最も際立ちます。 あえて小さな「ピーナッツタンク」を載せ、 給油回数が増える不便ささえも愛おしくなるスタイルです。 |
| フリスコ (Frisco) | サンフランシスコの渋滞をすり抜けるために 生まれたスタイル。高くセットしたタンクと、 幅の狭いハンドル、高いステップ位置が特徴。 | 【街乗り最強】 日本の狭い道路事情ともマッチします。 特にブラックアウトされたXL883Nアイアンをベースにすると、 悪っぽくて攻撃的な雰囲気に仕上がります。 |
| カフェレーサー (Cafe Racer) | セパレートハンドルとバックステップを組み、 前傾姿勢でスポーティに走るスタイル。 往年の名車XLCRを彷彿とさせます。 | 【走りの883】 「スポーツ」スターの名に恥じない運動性能を引き出します。 低く構えたフォルムは、停車しているだけで速さを感じさせます。 |
「大人のプラモデル」としてのレストア&カスタム
中古車市場には、外装が傷だらけだったり、塗装が剥げていたりして相場より安くなっている個体もあります。普通なら敬遠しますが、カスタム前提ならこれらは「最高のお宝」に変わります。
どうせタンクは交換するし、フェンダーは切ってしまう。塗装は自分好みのカラーにオールペン(全塗装)する。そう考えれば、外装の傷など気にする必要はありません。
ボロボロの中古車を安く手に入れ、週末ごとにガレージで少しずつパーツを交換し、自分だけのピカピカの一台に仕上げていく。このプロセスは、まさに「大人の実物大プラモデル」です。
完成品を買うだけでは得られない、機械との対話や愛着。新車の883が買えない今だからこそ、私たちは「創る」という、より深いバイクの楽しみ方に気付くことができるのかもしれません。
883カスタムの「沼」にもっと深くハマりたい方は、費用からスタイルまで網羅したこちらの解説記事を合わせて読むことをおすすめします。きっとカスタム熱がさらに高まるはずです。
総括:ハーレー883の新車は買えないが
最後にまとめとなりますが、確かにハーレー883の新車が買えないという現実は変わりません。しかし、それは883というバイクが「消費される工業製品」から「大切に受け継がれる資産」へと変わったことを意味します。
今、883に乗るということは、単なる移動手段を手に入れるだけでなく、消えゆく空冷エンジンの鼓動と、その文化を継承するということです。相場は安くありませんが、その鼓動にはプライスレスな価値があります。
※記事内の価格や相場情報は執筆時点(2025年12月)の目安であり、変動する可能性があります。購入の際は必ず最新情報をショップでご確認ください。
もしあなたの心が「ドコドコ」という音を求めているなら、良質な個体が市場にあるうちに、ぜひ一歩踏み出してみてください。きっと、人生を豊かにする出会いが待っているはずです。

